看護師の働き方が変わる?72時間ルールの変化

72時間ルールというものを耳にしたことはありますか。2016年の診療報酬改定の目玉ともいわれた72時間ルール。看護師の夜勤負担を軽減する目的で作られ、「夜勤をしている全看護師の合計夜勤時間」÷「夜勤をしている全看護師の人数」=72時間以内にしなくてはいけないと取り決められました。

2015年10月には夜勤を72時間以上している看護師の割合が38.9%だったのに対し、2016年10月は37.3%と少しだけ減っています。実際の現場でも「看護師ごとの夜勤の回数に差が出なくなった」「2交代夜勤の月の夜勤合計が4回以下にそろうようになった」など公平性を実感している声が増えているようです。

ただ、このルールを維持するには夜勤をする看護師の母数が必要になります。女性が9割を占める看護師業界には子育てや介護などで夜勤が難しいという人も少なくありません。日勤のみやパートなど夜勤のない働き方をしている看護師が多いと、結果としてこれまで夜勤の回数が少なかった看護師にまでそのしわ寄せが来てしまうのです。2015年10月と2016年10月の1人あたりの月平均夜勤回数を比べた調査によると、非常勤の2交代で0.1回、3交代の深夜勤で0.3回、夜勤回数が増えていました。これではせっかく制定されたルールも手放しにいいとは言えないでしょう。

同じ看護師でも家族構成やライフスタイルによって仕事に対する価値観は変わってきます。そのため、医療機関としても働き方の選択肢を増やし始めました。その1つが夜勤専従の看護師。この働き方だと72時間ルールの制約を受けることがないので、他の看護師の夜勤回数減につながります。「独身だから家庭を気にせずバリバリ働きたい」「夜勤の方が楽」といった人にはピッタリでしょう。

夜勤専従の看護師がいる医療機関はまだ全体の半分にも満たず、そこまで浸透していないようです。ただ実際のところ、スーパーナースなどの看護師転職サイトでも夜勤専従の求人を目にする機会が増えてきました。どの医療機関も実施しようという意思があることを見てとれます。診療報酬の優遇が制度化されるのかどうか、といった点も診療報酬改定のチェックポイントといえるのではないでしょうか。